虚構日記

数年前に描いた文やふつうの日記を描いております。若干右寄りだったり制服フェチです。

去年書いた医者の小説

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戦後まもなくして。
昭和二十年、夏のこと

ある離島に東京から医者の若い夫婦が越してきた。
名は黒田

表向きは医療に乏しい離島に、診療所を建て役立とうというものであった。
しかし、医者は元軍医であるため、左官され離島に送られてきたのであることをすでに知っていた。

 医者の人手が足りぬこの島では、島民たちは夫婦を大事な客人として宴を施し、歓迎した。
仲のいい夫婦は、この島で診療所を大きくしようと決めた。

 若い医者が島の一番えらい地主宅へ訪問医療に行った晩のこと。

雷雨にみまわれた。

その晩はその地主の旦那の好意に甘え、医者は泊まることにしたのだが。

 深夜の草木も眠る頃、医者の寝室に忍び寄る陰があった。
目を覚ました医者の前には、全裸のこの家の娘が立っていた。

「ねえいいでしょうお医者様。私の体を味わってちょうだい」

 なんとこの島では夜這いの風習が残っていたのであった。

妻のいる医者は、驚きながらも、声を張り上げ怒鳴った。

「なにをする!俺には妻がいるんだ!かえらせてもらう」

雷雨の中、医者は自らの家へと車をとばしていった。

「ようもわしの娘に恥をかかせてくれたな…。あとは知らんぞなもし」

この家の地主の旦那は、不気味な笑みをうかべ逃げる医者の背中を見送った。

 帰宅した医者は、すやすやと眠る妻を起こし、腕に抱いて眠った。

「こんな辺鄙な島じゃ、お前だけが頼りだよ、せつこ」

医者は清純なこの妻だけは守ろうと誓った。

翌日から、島民たちの態度が変わっていた。
診療所におとずれる者は誰一人おらず、あの慕っていた島民たちからは、冷たい視線と罵声を浴びせられたのであった。

 受けいられていたはずの医者はその一見以来、島民に村八分にされ商売がなりたたくなった。

 そんな医者に追い打ちを欠けるように、診療所は潰れた。
医者は酒を飲み、澱水する荒くれ者へと変貌を遂げていき、彼をみながよそものとして扱った。
だが妻だけは彼を愛し、優しくしていたのであった。
医者にとって妻だけが財産であった。

 そんなある晩のこと、彼が留守から帰宅すると、妻のあえぎ声が聞こえた。
医者は息が止まった。
忍び足で自宅に入り、和室のふすまを開けると、そこには島民の例の地主の男と性行為をする妻の姿があったのだ。

 怒りが頂点に達した医者は、地主と妻を乱暴に何度も殴りつけた。

「貴様らをゆるさん!地獄に堕ちろ! 」

「ごめんなさいあなた、ゆるして! 」

すでに地主は顔を血だらけにしてのびていた。
頬を殴られた妻は泣きながら許しを乞うたのだが、医者は拳を血に染めたまま、呆然と立ち尽くすしかなかった。

 地主によって妻も夜這いの風習を受け入れてしまったのを知った彼は、すべての島民への復讐を考えた。

 妻が強姦されたことを外部に伝えるだけでは、世間は動かないと踏んだ医者は、ある作戦を思いつく。

 それはエイズ患者の女を島に売春目的で徴収することだった。

故郷の東京へと帰った医者は、今までの財産を投げうたずとも、簡単に重い性病持ちの患者を集めることができた。

もちろん、彼女らエイズ患者は、観光者という立場にして、彼ら島民の夜這いに立ち会わせた。
すると、半年も経たず、すぐさま性病は島の男を通して、すべての女へと広がっていったのだ。
憎い地主は、とうとうエイズでころりとおっ死んでしまった。

ついに医者は 目には目を、毒には毒を、といわんばかりに、島民たちを性病にし、壊滅に追い込むことに成功したのだった。

東京に戻った医者は、悠々コーヒーを片手に病院のデスクにすわっていた。
そして「離島で集団死の謎」という新聞の一面を見てほくそ笑んだ。

後に数年後、彼の妻も、エイズで倒れて死んだことを、医者は知る由もない。